後継者に恵まれない社長

後継者に恵まれない社長

──”言えなかった息子”と、”聞けなかった父”の結末。 「ウチは、後継ぎがおらん」
「息子にも声かけたけど、反応なかったよ」
「まあ、俺の代で終わりやな」 …そんなふうに話す社長、たくさんいます。 でも本当は、
「継げなかった」じゃなくて
ちゃんと話せなかった」だけかもしれない。

私も、父とぶつかりました。

いや、正確には、ぶつかる前に終わりました。 言いたいことは山ほどあった。
でも、言えなかった。 聞いてほしかった。
でも、聞いてもらえなかった。 そして、僕は会社を去りました。
継ぐ話なんて、最後までちゃんとしたことはありません。

ボンクラと思われても仕方ない。

正直に言えば、僕はずっとこんな人間でした:
  • BtoBが苦手で、我慢強い営業は地獄だった
  • 訪問・キーマンに会うことがほんとに苦手だった
  • 「息子さんなのに…」という目がプレッシャーだった
  • 人を信用しないくせに、強がってばかり
  • 褒められたくてしょうがなかったのに、認められなかった

父の会社では、私は”働いてるフリ”しかしてなかった。

それでも、「継ぐのが当然」という空気の中で、
自分の気持ちなんて、押し殺して生きてた。 でも、ある時、限界がきました。 「これ以上、”誰かの人生”は生きられない」と思ったんです。

それから僕は、自分の道を選びました。

会社を出たあと、19,600円車上生活から起業。
そして、過剰な頑張り、無理やり新規事業に突っ込み、
失敗を重ねながら、ようやく今の仕事にたどり着いた。 振り返れば、
父とぶつかって終わったのではなく、”ちゃんと向き合えなかった”だけだった。

統計が示す現実

  • 後継者不在の中小企業:全国で127万社超(2023年・中小企業庁)
  • そのうち約半数が「親族承継を希望するも断念」
  • 「創業者のこだわりが強すぎて、意見が通らない」が主な理由の1つ
  • さらに6割以上の後継者が「自分に自信がない」と回答
これって、親子間の”感情的断絶”が大きな要因だということ。

「恵まれなかった」のではなく、「信じ合えなかった」だけかもしれない

父は、「任す」と言わなかった。
僕は、「無理だ」とも言えなかった。 気づけば、お互いに”わかりあえない”まま、時間だけが過ぎていった。

それでも人生は終わらなかった

父と分かれ、家も会社も離れ、ひとりになって、
ようやく自分の声が聞こえるようになった。 そして、いま僕は、
あのとき”継げなかった自分”を恥じるのではなく、
“自分を生き直せたこと”を誇りに思っている。

最後に伝えたいこと

「後継者に恵まれない」と言う社長たちへ。
「継げなかった」と悩む後継者たちへ。 それ、本当に”才能”の問題ですか?
本当に”能力不足”ですか? もしかしたら、
ただお互いに、言葉が足りなかっただけかもしれません。
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